赤い月 肆
そんな理由でうさぎを?
誰よりも、俺よりも、おまえを信じてたうさぎを…
ギリリと音が鳴るほど奥歯を噛みしめた景時が、動いた。
ヒトを守るために鍛えた速さで、差し出された手を掴んで引き寄せる。
ヒトを守るために鍛えた力で、守るべきヒトである深雪の細い首を…
「うさぎは…
うさぎは、おまえを…」
怒りに支配された脳裏に浮かぶ、愛しい人。
蹲る小さな躰。
陶器のような肌を這う、凶々しい呪。
苦しげな吐息。
おまえのせいで…
俺のせいで…
うさぎ、うさぎ、うさぎ…
細い首を絞め…
─そなただけは
最後まで信じてやるが良い─
「ぅ…あああぁぁぁぁぁ!!」