赤い月 肆

首を絞め上げ…られなかった景時が、深雪を突き飛ばした。


「オメェ…
オメェ、ダレなんだ??!!」


床に倒れた深雪が、手を着いて身を起こす。


「ナニ言ってるの?
私は」


「深雪さんじゃねーよ!!!」


血を吐くような景時の叫びが、朽ち果てた洋館に木霊した。


「深雪さんは寂しい人だよ!
こんな方法でナニカを手に入れたって寂しさは埋まらないって知ってるくらい、寂しい人なンだよ!!」


深雪の躰が、水揚げされた魚のようにビクリと跳ねた。


「だから、気休めに色んな男に甘えて、自分を傷つけて…
深雪さんは寂しくて…優しい人だ!!
オメェは深雪さんじゃねぇ!!
オメェはいったいダレ‥‥‥
おいおい?」


横たわる深雪が、ビクビクと痙攣していた。

目を閉じ、口を大きく開け、胸を掻きむしって悶える姿は、明らかに尋常ではない。

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