赤い月 肆
景時は慌てて彼女を抱え起こした。
「え? え?
ちょ… 大丈夫?」
ナニ?コレ。
ビョーキ?
発作とか?
狼狽える景時の腕の中で一際大きく跳ねた後、深雪はうっすら目を開けた。
「…
景時くん‥‥‥
ありがとう‥‥‥」
「ハイ?」
ナニが『ありがとう』?
どーゆーコト?
てか、結局ダレ?
ソレよりナニより術者はドコ?
「なんてことしてくれたのよ!!
もう少しだったのに!!」
焦りと混乱で気が遠くなりそうな景時の背後から、さらに混乱を招くような怒声が聞こえた。
だってその声の主は、今目の前にいるはずの深雪…
景時が振り向く。
視線の先にはウォールミラー。
映り込むはずのない深雪を映したウォールミラー…