赤い月 肆

「触れれば…呪に侵されるぞ。
薫… 頼みがある…
景時を‥‥‥止めてくれ。」


「は?」


いやいや?

『うさぎを頼む』って言われて。

でも、触っちゃダメって言われて。

さらに『景時を止めろ』って頼まれて…

どの部分を優先すべき?

途方に暮れた薫は、肩で息をするうさぎの前にしゃがみこんだ。


(どー見ても、コレが最優先だろ。)


躰を支えようと床に着いた手が震えている。

額に汗が滲んでいる。

どー見ても、死にそう…

なのに彼女の口を衝いて出るのは、景時の名。


「景時は… 勘違いしておる。
この呪は深雪の仕業では…
相手は…
相手は人では… 敵わぬ…」


なるほど。

術者を殺りに行ったワケだ、あのバカは。

だがその相手は見当違いで、逆にバカがヤバい、と。

…え。
ソッチもマズいじゃん。

< 206 / 265 >

この作品をシェア

pagetop