赤い月 肆
「触れれば…呪に侵されるぞ。
薫… 頼みがある…
景時を‥‥‥止めてくれ。」
「は?」
いやいや?
『うさぎを頼む』って言われて。
でも、触っちゃダメって言われて。
さらに『景時を止めろ』って頼まれて…
どの部分を優先すべき?
途方に暮れた薫は、肩で息をするうさぎの前にしゃがみこんだ。
(どー見ても、コレが最優先だろ。)
躰を支えようと床に着いた手が震えている。
額に汗が滲んでいる。
どー見ても、死にそう…
なのに彼女の口を衝いて出るのは、景時の名。
「景時は… 勘違いしておる。
この呪は深雪の仕業では…
相手は…
相手は人では… 敵わぬ…」
なるほど。
術者を殺りに行ったワケだ、あのバカは。
だがその相手は見当違いで、逆にバカがヤバい、と。
…え。
ソッチもマズいじゃん。