赤い月 肆

薫はジーンズのポケットから携帯を取り出し、素早く秋時にダイヤルした。


「…
あ、ジジィ?
景時追って。
全力で。
バイク、制服、3分前にココ出た。
多少ムチャしてでも取り押さえなきゃ、アイツ死ぬカモ…
って、ナニやってンだぁ?!」


『おい?
どーゆーコト』


ブチっ

ごめん、ジジィ。
詳しくはのちほど。

薫は、再び窓枠に足をかけたうさぎの着物の裾をひっ掴み、部屋に引きずり戻した。

なんの抵抗もなく、床に転がる軽い躰。

手応えのなさにゾっとする。

この人はこんなんじゃない。
こんなにヤワじゃない。

この人は‥‥‥


「そんな躰でドコ行こうってンだ?!
死ぬ気か?!」


怒鳴ったはずの薫の声は、悲鳴のように聞こえた。

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