赤い月 肆
「えー??!!
ちょ… 待って、待って。
違うか」
「うさぎちゃん、行こ?
ココ、雰囲気悪いし。」
「てか、カンジ悪いヤツいるしぃ。」
「え? 待て。景…」
ナニカ言いたげなうさぎを、祥子と小鞠が連れ去ろうとする。
「待てって、まじで。
うさぎ、違ェンだって。
ちょ… 行くな─────!!」
景時が手を伸ばして‥‥‥
あ。
言えたわ。『行くな』って。
だが、祥子と小鞠に両サイドから腕を引かれたうさぎは、長い黒髪を揺らして振り返りながらも屋上の扉の向こうに消えた。
「大丈夫だよ、バカ杉。
祥子も桜木も、ちゃんとわかってるから。」
「とりあえず、今日のトコロはお持ち帰りされずにすみそーだな、バカ時。」
腕を伸ばしたまま膝を着いて項垂れる景時の背後から、大吾と薫が生温かく声をかけた。