赤い月 肆

拝観時間の終了を早めたのか、一般客はいない。

秋時の姿はないし、僧も留守番の者しかいない。

理由もわからないまま、全力で景時を捜しているのだろう。

説明不足でスンマセン。
色々と緊急事態ナンデスヨ。

ここならちょっとした結界を張ってしまえば、あなたの知らない世界は、あなたの知らない世界のままだ。

後は蛇…

薫は、うさぎを境内が見渡せる本堂に寝かせた。


「もう少し、頑張れよ。」


励ますように声をかけて、踵を返す。

が、


「待て…」


か細い声に呼び止められた。

振り向くと、さっきまで目を閉じていたうさぎが、薫を見ている。


「妾を…地に…」




地面に置けってか?

こんなに弱ってるこの人を、直に土の上に置けってか?

薫は思い切り顔を顰めた。

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