赤い月 肆

群れの中の白く小さな一匹が横たわるうさぎに近づき、地を弾く彼女の手首に向けて、細い舌をチロチロと出した。


「白(ハク)…」


その蛇を見て力なく微笑んだうさぎは…

長く鋭い爪で、自分の手首を掻き切った。


「??!!」


流れ落ちる鮮血。

血を浴びて赤く染まる蛇。

息を飲む薫の目の前で、蛇がうさぎの血を舐めた。

その血にどんなチカラがあるのだろうか、徐々に大きく膨らんでゆく蛇。

だが、うさぎは鬼。
直ぐに傷は塞がってしまう。

その度に、彼女は自分を傷つける。

切る、流れる、舐める。

切る、流れる、舐める。

切る、流れ…


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