赤い月 肆

(…こんなん…)


「見てられるか!!」


また手首を裂こうとするうさぎの指を、薫が強く払った。

そして持っていたバジュラの尖端で、自らの手首を突く。

溢れ出したうさぎのものよりも濃い赤に、血塗れの蛇は矛先を変えた。


「よせ…薫…
呪が… 血が…」


「黙っとけ!
アンタ、本当にバカだよな!!」


弱々しく呟くうさぎを、薫は怒鳴りつけた。

だがその顔は、泣きそうに歪んでいる。


(別に、誰の血でも良かったンじゃねーか。)


コイツ喜んで舐めてンじゃん。
順調に成長してンじゃん。

既に白い蛇は、うさぎよりも大きくなっている。

そんなに弱ってンだから、俺に頼めばイイだろ?

『ちょっと献血して☆』
って、言えばイイだろ?

挙げ句の果てに、死にそーな声で
『よせ、薫』
だってよ。

俺が言いたいわ。

そんなヘロヘロで人の心配ばっかしやがって…

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