赤い月 肆

「信じらんねーバカだわ。」


「バカ言うヤツが、バカなんやで?
バ───カ。」


「は?」


隣のうさぎはもう目を閉じている。
気を失ったのかもしれない。

寺の中とはいえ一応結界を張ったから、他の僧も近づけないハズ。

じゃあ今の『バ───カ』は、ナンデスカ?

さっきまで急成長する白蛇がいた場所に目を向けると…
足があった。


(…
出た…?)


薫がゆっくり視線を上げる。

巫女装束の上からでもわかる、ダイナマイトボディ。

艶やかにうねる肩までの黒髪。

男を誘うようにヌラヌラと光る白い肌。

桜色の唇と、その脇のほくろ。

瞳は…ない。
長い睫毛に囲まれた目の中は、まるでクリスタルオパールのよう。

醸し出されるこの色気は…

まさか…

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