赤い月 肆
私は鏡
私は鏡。
自我が芽生えた時には、私は美しい女を映していた。
レース、フリル、リボン…いつも美しいモノで飾られた、美しい女。
使用人に傅かれる、美しく高慢な女。
私は向こうの世界に憧れた。
美しいモノを映し続けるだけなんて、虚しい。
美しいモノになりたい。
そうよ、美しいモノを映し続けてきたんだもの。
誰よりも美しくなれるはず。
あの女の美しい顔が欲しい。
磨き抜かれた身体が欲しい。
今なら出来るわ。
私は神になったのだから。
毎日毎日鏡に映る女を、私はゆるゆると操作した。
そして不幸を与えた。
肉体を傷つけてはダメ。
精神をズタズタに痛めつけて。
早く心を壊しなさい。
美しい脱け殻になりなさい。
そして私を受け入れなさい…