赤い月 肆

だが女は襲いかかる災いに世を恨み、壊れる前に闇を孕んでオニになった。

なんてこと…

こんな醜い生き物はいらない。

でも、暴れだして騒ぎになるのは面倒だわ。
それに、何かの役に立つ日が来るかも…

私はオニを飲み込んだ。

鏡の世界に閉じ込めた。

女が『行方不明』になって数十年、女の家は没落した。

私はまた、別の美しい女を映すようになった。

今度こそは‥‥‥

でも、オニが増えただけ。

私はまた、別の美しい女を映すようになった。

今度こそ、今度こそは‥‥‥

でも、またオニが増えただけ…

古美術店で他の鏡たちと並びながら、私は考えた。

手口が強引すぎたのかもしれない。
直接的に、攻撃しすぎたのかもしれない。

もっとジワジワと追い詰めなければ。

真綿で首を絞めるように。

だが、あまり悠長にしていては、女が老いてしまう。

何かいい手はないかしら…

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