赤い月 肆

…ムカツク。


(いつまで深雪さんに化けてンだよ。
全然似てねークセに。)


早く深雪を解放しなきゃ。
早く… 早く、うさぎを…

景時はバジュラを握り直し、下段に構えた。

バジュラの尖端が雷光を放ち、一振りの刀が生まれる。

斬鬼刀。

相手は明らかにオニではないし、『闇』も関係ないかもしれない。

…斬れるか?


「な… なによ、ソレ。
何したって無駄なんだから…」


見たこともない得物に、鏡が少し怯みながらも威嚇してくるが、構っている暇はない。

景時はやはり無言で刃を返し、思いきり鏡面を斬り上げた。


「キャァァァァァァァァ!!!」


耳を劈く悲鳴。
共鳴して震える大気。


(やったか?)


景時は鋭く鏡を睨みつけた。

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