赤い月 肆
叱るように、励ますように、薫は捨てられた子犬と化した景時を見据えた。
しっかり、ね。
誰にも奪られたくないし、ね。
わかるよ。
でも…
どーしっかりすりゃイイの?
ナニも気にしてマセン、みたいに?
そんなんムリムリ。
スっっっゲェ気になるもん。
いっそ、感情剥き出しにしちゃう?
…や、ダメだろ。
またあんなコト…
もう、あんな辛そうなうさぎ、見たくねぇよ。
じゃ‥‥‥
うさぎをアイツに返す。
ごめん、言ってみたダケ。
この選択肢はナイ。
『行くな』って言えれば…
言えば…
うさぎは‥‥‥‥‥
しっかりしなきゃ。
なんかもーワケわかんねーケド。
しっかりしなきゃ。
とりあえず、出来るコトから…
とりあえず…
景時は決然と顔を上げた。
「とりあえず、捨てないで、薫ちゃん。キリッ」
「死ね。」