赤い月 肆

「いやぁぁぁ!!」


悲鳴を上げたのは深雪。

景時は表情も変えずに痛みに耐えた。

マズい展開だ。

周囲をグルグル回り、結壁の隙間をついて肉を裂く鏡の刃。

飛弾で攻撃したとしても、コッチが出血多量でくたばるほうが確実に早い。

深雪を庇ったままでは…

いや、諦めんな。
考えろ。

うさぎならこんな時、ナニカを捨てたりしないだろう。

全部拾い上げようとするだろう。

うさぎなら…

うさぎ‥‥‥


(あ。)


白い部屋。
青い炎。
燃えた鏡…

ついさっき見た光景が蘇る。


(コレ… 浄化できンじゃね?)


目に入った自分の血を腕で雑に拭いながら景時が視線を上げると、鏡の破片は集まりだしていた。

重なり合い、犇めき合い、一つの大きな刃になっていく…

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