赤い月 肆

「深雪さん、ココにいて?」


「…ナニするの?」


景時は深雪の問いには応えず、彼女を支えていた手を離した。

そして深雪を背にバジュラを構えて立ち、巨大な刃と対峙する。


「やめて、やめて…
私のことはもうイイから…」


「やめて、やめて、アハハっ
全部放り出して逃げちゃえば、命は助かるかもよぉ?」


全く同じ声が、全く違う言葉を紡ぐ。


「死なないで─────!!」


「死んじゃえ─────!!」


明らかに景時の心臓を狙う、迫り来る刃の軌道。

だが、もう防御はしない。

己を守れば、深雪を襲う。
深雪を守れば、己を襲う。

なんたって敵は、驚くほど性格が悪いのだ。

景時はバジュラを胸の前に突き出した。


「縛鎖!」


雷光の鎖が刃に絡みつき、絞め上げ、その勢いを殺す。

破片が散らばり、拘束を解く前に…

効いてくれ、どうか‥‥‥


「浄化!」

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