赤い月 肆
瞬間、鏡の破片たちがさらに細かく砕け散った。
力を失って床に落ちる様は、まるで光の雨のよう。
景時は緊張感を保ったまま、床に積もった鏡の残骸に歩み寄った。
砂山のように盛り上がった塵の上部を足で蹴って、散らしてみる。
反応は‥‥‥ない。
「やった…?」
「やったの?」
呟きに呼応した深雪の声にギョっとして振り返るが、ソコにいるのは本物の深雪。
ウォールミラーに視線を送ると、性悪深雪もどきは消えていた。
「やった…みたい。」
「…
景時くんって… ナニモノ?」
「あー…
俺、夜バイトしてるって言ってたでショ?
なんか… こーゆー仕事?」
「‥‥‥中二っぽい‥‥‥」
ぅあー…
中二… うん…ソーデスネ。
景時はガクリと赤い頭を垂れ、溜め息を吐いた。