赤い月 肆

いやいや。
まだ脱力してる場合じゃない。

うさぎの無事を確かめなくちゃ…


「深雪さん、ごめん。
送ってけないケド、タクシ…
ぉうゎ?」


背中に軽い衝撃を感じて振り向くと、深雪が縋りついていた。

顔を伏せているので、景時には彼女の表情は見えない。

だがTシャツを握るその手は、細かく震えていた。


「ごめん、景時くん。
ごめん‥‥‥」


「…
深雪さんのせーじゃナイでショ?」


「でも…
景時くんのカノジョまで…」


「うさぎならきっと大丈夫。」


景時は微笑んだ。

深雪には見えていないだろう。

それでも精一杯の優しさを込めて、微笑んだ。


「深雪さんを一番信じてたのは、うさぎなんだ。
なにもかも、全部、深雪さんのせいじゃない。
深雪さんは悪くない。
だからもう…
幸せになっていいンだよ。
人を好きになっていいンだ。
うさぎもきっと、そー言うよ。」

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