赤い月 肆

さっき秋時から、『撒かれた』との短いメールを受信した。

まだ見失った場所付近を捜索しているようだが、もう景時を捕まえることはできないだろう。

オニ狩りとしてもそうだが、状況に応じた判断力、行動力、そして機転…あらゆる面で、彼は慈龍寺で最も優秀なのだから。

だが…


(優秀… でもねぇか。
メンタル弱いし。)


うさぎが絡むと、景時はいとも簡単に正常な判断力を手離す。

挙げ句、暴走する。

今回だってトチ狂って走り出す前に、ちゃんとうさぎの話を聞いていれば…


「なんか…
ゴメンナサイ。」


薫は景時に代わって、白蛇に頭を下げた。


「や、エエケド… そのコ…」


白蛇は、首から上を蛇に飲まれているうさぎをチラリと見た。

色気満載の顔が、少し曇っている。


「ナニ?」


「…
なんもない。
あ、治ったで。」

< 243 / 265 >

この作品をシェア

pagetop