赤い月 肆
さすが蛇神。
怒れる鬼神に、平然と口答えする。
「ぐ…
薫、貴様!!」
言葉を詰まらせた黒曜が、呼吸困難に苦しむ薫に矛先を変えた。
「ちなみに、呪に感染した挙げ句血ィ流してまでウチを呼んだんは薫やでー?」
「ぐ… ぐぅぅ…」
薫を庇う白蛇の言葉に、黒曜は唸った。
急速に鬼気は収まり、窒息死の危機は去る。
しかし、顔を上げた薫の目に映った黒曜は…
眉を険しく顰めている。
浅黒い肌を朱に染めている。
ワナワナと全身が震えている。
そして、コチラを睨みつけて…
「あ… あ… あ…」
『あ』ナニ?
なんなの?
今度はナニを怒ってンの?
殺すの?
とりあえず覚悟だけはしとこ…
「あ… ありがとう!!!」
「‥‥‥へ?」
「フ… ヒャーヒャハハハっ」
ドスの利いた声でお礼?を怒鳴った黒曜は、埴輪顔の薫と腹を抱えて笑う白蛇に、クルリと背を向けた。
あー…
お礼…
お礼デシタカ。
ドーイタシマシテ…って、紛らわしすぎンだろ、おい!