赤い月 肆
タラシ
モゴモゴは、頭ではなく手デシタ。
「アンタ、姫に触ったンやろ?
ほら、早よ出しぃ。」
白蛇が取ったのは、薄く呪が浮かびだした薫の腕。
ヨカッタ…
いや、自分の手が蛇にモゴモゴされてンのは、イヤデスケドネ?!
頭よりゃ、マシだろ…
ふ、と溜め息を吐いて境内に目をやると、うさぎの頭を膝に乗せて木の下に腰を降ろす黒曜が見えた。
土の上より芝の上のほうがまだマシ、という選択をしたのだろう。
白い頬を、銀の髪を、浅黒く大きな手が撫でる。
優しさと愛しさを込めて、ゆっくり撫でる。
夕闇の中、銀光に包まれた二人の美しい鬼神…