赤い月 肆

その男…景時は泣きたかった。
叫びたかった。
いっそ、消え去りたかった。

あんまりじゃない?
このタイミング。

うさぎの元カレが現れて。

俺とうさぎの距離が微妙で。

俺の元カノが現れて。

その上うさぎの目の前で、元カノに抱きつかれてるぅぅぅ?!

神様、仏様、なんなんデスカ、この試練─────??!!

女のコに手荒な真似はできないので、細心の注意を払って深雪を押し退けようとするが、彼女は動かない。

というより、深雪はうさぎを見て硬直していた。

頬を染めて瞬きを繰り返し、小さく呟く。


「綺麗…
本当に生きてるの?」


ハイハイ。
気持ちはわかるケドね?

とりあえず放して─────!!


「ちょ、深雪さん?
俺、今から友達と」


「景時。
妾たちは先に行っておる。」


口を挟んだうさぎを見て、景時は顔を強張らせた。

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