赤い月 肆

「なんで…
怒ったの?」


「?
何故、怒るのじゃ?」


うさぎが細い指を顎に当て、首を傾げる。

いつもは可愛いと思える仕草が、今は憎らしい。


「久し振りなのであろう?
ゆっくり再会をことほぐが良い。」


二人に軽く微笑んで、うさぎは踵を返す。

その優しい微笑みでさえ、今は‥‥‥‥‥

怒られたほうがマシ。

怒りもない。
動揺もない。

うさぎはフツー。

うさぎじゃない別のコが、俺の隣にいても。

出逢った時と変わらず、今もまるで相手にされてないってコト?

俺じゃ役不足?

こんなに好きなのに。

君のためなら、なんだってできるのに。

やっぱり、アイツが…

うさぎの夢を占拠していた、あの鬼が…

< 29 / 265 >

この作品をシェア

pagetop