赤い月 肆
私が言おうと思うの
「浄化!」
『闇』が消え、静かな春の夜が戻る。
脱け殻となった犬の死骸を見下ろした景時は、腕に出来た裂傷を押さえた。
流血も少ないし、ほっとけば治るようなかすり傷だ。
だが、ここ最近狩りが粗くなっている。
景時は、それを痛いほど自覚していた。
チカラが低下しているわけではない。
かなり睡眠不足だが、体調は悪くない。
精神が乱れる原因は、たった一つ…
(俺、メンタル弱すぎ…)
景時は赤く染めた長めの猫毛を掻き上げて、溜め息を吐いた。