赤い月 肆

「ねぇ、高杉くん。
高杉くんがうさぎちゃんに言わないなら、私が言おうと思うの。
『行かないで』って。」


「え?
ソレはちょっと待って…」


凛々しいとも言える顔つきで見上げてくる小鞠に、景時は焦ると同時に驚いた。


(小鞠ちゃんって、こんな顔するンだ…)


おっとりしてて、柔らかくて、弱々しかった小鞠が…

彼女は優しさと強さを併せ持つ、成熟した女性に変貌を遂げようとしていた。

彼女の目標とする人、即ち景時の愛する人の影響で。


「私、もううさぎちゃんと会えなくなるなんて、イヤ。
だから、ちゃんと気持ちを伝えようと思うの。
そうしたら、うさぎちゃんはちゃんと考えてくれると思う。
急にいなくなったりしないと思う。
だって…
うさぎちゃんだもん。」

< 48 / 265 >

この作品をシェア

pagetop