赤い月 肆
今度こそ本物の月
苦い追憶を破ったのは、携帯の着信。
腕時計を見ると、結構時間が経っていた。
帰らなきゃなー…なんて思いながら、景時は相手を確認せずに通話ボタンを押した。
「ハイ?」
『景時くん?
私ィ。深雪。』
「‥‥‥あー…
さっきぶり。」
深雪さん…
デスヨネー?
こんな時間に携帯を鳴らすのは、急ぎの狩りか…女。
取らなきゃ良かったか?
それとも、心のドコカで期待してた?
俺、サイテー…
『前はいつもこれくらいの時間に会ってたから、電話出てくれるかと思って。』
自嘲気味に唇を歪めて目を閉じた景時の耳元で、鼻にかかった甘い声が囁き続ける。