赤い月 肆

見る人によっては、身持ちの悪い、ふしだらな女だろう。

だがそうすることでしか、深雪の孤独は埋まらなかった。

彼女はたった一人を愛せない。
たった一人を愛することが怖かった。

だから…

彼を、捨てたのだ。

景時を、愛してしまいそうだったから。

でも、惜しむ気持ちは全くなかった。

大勢の内の一人に格下げしても、彼は自分から離れていかない。

そう、高を括っていた。

それは、慢心や自惚れが理由ではない。

彼もまた、心から誰かを愛せない人だと確信していたから。

彼は優しい。
慈しみをもって心を開かせ、全てを受け止めてくれる。

だが彼自身は肝心な部分をシャットアウトし、そこに他人を寄せつけようとしない。

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