赤い月 肆
ブルース・リーのおかげ
担任教諭の佐々木剛を待ってホームルームを終えれば、楽しい放課後突入という時間、青ざめたうさぎが、薫のブレザーの袖をそっと引いた。
「薫…
景時が病んでおる…」
「へ?」
ヤんでる、て。
薫は机に突っ伏して寝ている様子の景時をチラリと見て、声を落としてうさぎに問うた。
「どーヤんでンの?」
「夜、帰ってからも、昼に起きてからも、妾の顔を見て同じ言葉を繰り返すのじゃ。
今も…寝てはおらぬぞ。
傍へ行ってみよ。
聞こえる‥‥‥」
うさぎは身を震わせて目をギュっと閉じ、耳を塞いだ。