赤い月 肆

うさぎは再び景時を視界に捉えた。


「景時、いったいどうしたというのじゃ。
妾に話してみよ。」


捕まれていないほうの手を伸ばし、茫然としている景時の頬に触れる。

気遣うように、優しく、頬に触れる…

『考えるな、感じろ』

景時はうさぎの華奢な身体を、力いっぱい抱きしめた。


「よっしゃぁぁぁぁぁ!!!
やっぱブルース、スゲぇぇぇぇぇ!!!」


グランドに響く景時の声。

背後からは微かに歓声が聞こえる。

天国のブルース様も、きっと喜んでくれるよねぇぇぇ?!


「景… 放せ。
やはり薬師に…」


「いーやーだー
誰が放すか。」


顔を胸に押しつけられたうさぎがなにやらモゴモゴ言ってるが、景時は力を緩めない。

愛しい人を腕の中に閉じ込めたまま身を屈め、その耳元に甘く囁く。

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