赤い月 肆
妾は死んだ
うさぎが景時の部屋に拉致されてきて初めて、薫が夕飯を食べに来なかった。
と言っても、ベランダ越しに料理の受け渡しが行われたワケだが。
たぶん…いや、間違いなく気を遣ってくれたのだ。
愛してるよ、薫ちゃん。
おまえの気持ちは無駄にはしない…
てなワケで景時は、夕食の片付けが終わって、いつものようにロッキングチェアに向かううさぎを捕獲した。
向かい合わせになるようにうさぎを膝の上に乗せ、白いソファーに腰掛ける。
なぜか未だに薬師、薬師と繰り返すうさぎに、景時は今まで溜めていた思いの丈を打ち明けた。