赤い月 肆
安堵の溜め息を漏らしながら睫毛を伏せたうさぎを見て、景時は甘く微笑んだ。
「心配かけてごめんね?
まー、ヤキモチも立派なヤマイだケド。」
「そなたの嫉妬は、なんと言うか…
凄まじいものじゃな。」
うさぎは気が抜けたように呟くと、景時の肩に頭をもたせかけた。
「案ずるな。
今のところ、此処を離れる気はない。」
「‥‥‥今のところ、なの?
いつかアイツの…黒曜のトコロに帰るの?」
「黒曜の元へは戻らぬ。」
銀の髪を撫でながら切なげに呻いた景時に、うさぎはやけにキッパリ断言した。
景時の手がピタリと止まる。
『笑顔が戻った』今も、『もう愛せぬ』は継続中なのだろうか。
聞きたいコトがたくさんある。
黒曜のコト。
『心が死んだ』コト。
『くよ』のコト。
最近ではあまり感じないが、出逢った当初自分と重ねているような気がした、『そなた』のコト。
哀しい瞳で、それでも月を見上げる訳も…