赤い月 肆

安堵の溜め息を漏らしながら睫毛を伏せたうさぎを見て、景時は甘く微笑んだ。


「心配かけてごめんね?
まー、ヤキモチも立派なヤマイだケド。」


「そなたの嫉妬は、なんと言うか…
凄まじいものじゃな。」


うさぎは気が抜けたように呟くと、景時の肩に頭をもたせかけた。


「案ずるな。
今のところ、此処を離れる気はない。」


「‥‥‥今のところ、なの?
いつかアイツの…黒曜のトコロに帰るの?」


「黒曜の元へは戻らぬ。」


銀の髪を撫でながら切なげに呻いた景時に、うさぎはやけにキッパリ断言した。

景時の手がピタリと止まる。

『笑顔が戻った』今も、『もう愛せぬ』は継続中なのだろうか。

聞きたいコトがたくさんある。

黒曜のコト。

『心が死んだ』コト。

『くよ』のコト。

最近ではあまり感じないが、出逢った当初自分と重ねているような気がした、『そなた』のコト。

哀しい瞳で、それでも月を見上げる訳も…

< 95 / 265 >

この作品をシェア

pagetop