玄太、故郷へ帰る
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「後は、必要なモノを取り出すだけだ」
そう言ってやたらに真剣な顔付きの玄太の左頬には、大きなニキビが一つできていた。
ピンク色のそれが今にもはち切れそうなので、私はそちらの方にばかり気が行ってしまう。
「うん、そっか」
私が玄太の頬から視線を反らさずに、そう適当な返事をすると、
「姉ちゃん、僕の話、ちゃんと聞いてないね」
玄太の表情と一緒に、ピンク色のそれも動いた。
「聞いてる聞いてる、聞いてるよ。……で? 必要なものとやらがそこに?」
私は、背中を丸めて屈み込む玄太の視線に合わせる様に、制服のスカートのプリーツを気にしながらしゃがみ込んだ。
ジャリ……と、ローファーの裏で砂が嫌な音を立てる。
「うん。そう」
そう言って頷く玄太は、どこか得意気だ。
学ランの金のボタン が、夕日を浴びて鈍いオレンジ色に光っている。
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