玄太、故郷へ帰る
3
………
「まったく、なんだって……突然……」
そう言って溜め息をつきながら、キッチンでお茶を注ぐ母の指は微かに震えている。
そんな様子に思わずチラリと母の横顔を見ると、睫毛を伏せた表情には安堵と不安とが入り交じり、顔色が少し……悪いかもしれない。
私はそんな母を心配しながら、隣に立ってお茶菓子の用意をする。
ザッザッザッ
ガツッ
ザッザッザッ
憤慨しすぎて、怒りをどこにぶつけたらいいのか分からない父が、スコップで雪をかく音がキッチンにまで響いている。
カツンッ
ザッザッザッ
ガツッ
ザッザッザッ
スコップの音が、まるで怒りそのものの様に、激しい。
『どけ!』
そう言って玄太を一喝し、玄関に立て掛けてあったスコップを持って、そのまま外へ出た父。
上着も着ずに。
『お父さん、それじゃあ寒いわよ』
と、結局その後をジャンパーを持って追いかける羽目になった母。
戻って来た母は、よそ行きの笑顔を貼り付て、身重の彼女に気を使いながらリビングへと突然の来客を通した。
そうして今、暗い顔をしながらこうして二人のために熱いお茶を入れている。