玄太、故郷へ帰る



………


「まったく、なんだって……突然……」


そう言って溜め息をつきながら、キッチンでお茶を注ぐ母の指は微かに震えている。
そんな様子に思わずチラリと母の横顔を見ると、睫毛を伏せた表情には安堵と不安とが入り交じり、顔色が少し……悪いかもしれない。

私はそんな母を心配しながら、隣に立ってお茶菓子の用意をする。


ザッザッザッ
ガツッ
ザッザッザッ


憤慨しすぎて、怒りをどこにぶつけたらいいのか分からない父が、スコップで雪をかく音がキッチンにまで響いている。


カツンッ
ザッザッザッ
ガツッ
ザッザッザッ


スコップの音が、まるで怒りそのものの様に、激しい。


『どけ!』

そう言って玄太を一喝し、玄関に立て掛けてあったスコップを持って、そのまま外へ出た父。
上着も着ずに。

『お父さん、それじゃあ寒いわよ』

と、結局その後をジャンパーを持って追いかける羽目になった母。

戻って来た母は、よそ行きの笑顔を貼り付て、身重の彼女に気を使いながらリビングへと突然の来客を通した。


そうして今、暗い顔をしながらこうして二人のために熱いお茶を入れている。



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