玄太、故郷へ帰る
「説明? 説明って何の? 見たまんまが事実だよ」
そうあっけらかんと答える玄太を正面にして、母はゆっくりと腰を下ろす。
正方形のコタツ。
母の向かいに、玄太。
玄太の隣に、弥生ちゃん。
必然的に、私は弥生ちゃんの向かいに座る事になる。
……なんだか、嫌だな。
この空気。
私はお煎餅を並べた器をコタツの上に置いてしまうと、サッサとこの場から退散する事を企んだ。
そんな私のそそくさとした様子に玄太が気が付いて、
「姉ちゃん、座れよ」
と言う。
「そうよ、美香恵。座んなさい」
母もそう続けて、助けを求める様な表情で私を見上げる。
……ああ。
二人は私を衝撃吸収材にでもするつもりだ。
渋々座り、コタツの上を辿る私の視線の先には、細くて綺麗な弥生ちゃんの指。
その指が、ひらり、と動いて湯呑みを持ち上げると、
「いただき、まあす」
鈴が鳴る様に可愛らしく、けれども玄太にも負けない程間の抜けた弥生ちゃんの声が、一瞬で母の反感を買ってしまったようだ。
ピクリと、母の人差し指が動く。