玄太、故郷へ帰る
「……なるほどね。婿養子ってわけか」
「違うよ。弥生には兄貴がいるんだ。僕はいずれここで、植木屋をやるんよ」
「は? ここで?」
「うん。一人前になったら、弥生と子供連れて、ここに引っ越してくるつもり。それで、植木屋をやる」
「………」
……何と言うか。
話がかなり飛躍していると思うのは、私だけだろうか。
玄太はそんな私の視線にはお構い無しに、今度は唐揚げ弁当に取り掛かっている。
ダン、ダン、ダン
一階の廊下に響くのは、まだ怒りに任せている父の足音。
トイレにでも行ったかな。
全く、この尋常じゃない足音を聞いても、マイペースな弟には何も響かないのだろうか。
鶏の唐揚げを一つ、大きな口に放り込んでいる。
ベッドの上から香るニンニクの香ばしい匂いに釣られて、私も自分の弁当を開けてみる。
……うむ。
鶏唐の他に、牛蒡と蓮根のきんぴら、里芋の煮物まで入っている。
美味しそうだ。
「……詩人になるのは、どうしたの?」
私は箸で里芋をつまみながら、そう玄太に問いかける。