玄太、故郷へ帰る
玄太はきんぴらを箸でつつきながら、
「じゃあ聞くけどさ、姉ちゃんにとっての、詩人の定義ってなんなの?」
と、そう私に質問を返してきた。
「……定義?」
「そう、定義」
面倒な話だ、と、私は里芋を頬張りながら思った。
玄太は相変わらずあっけらかんとして何食わぬ顔できんぴらを口に放り込んでいるけれど、私を何か都合のいいように言いくるめようとしているのかもしれない。
「よく……わかんないけど。詩人になりたいって出て行ったのはあんたでしょ? 詩人になるまでは帰らないって」
「……うむ」
「でも帰ってきたでしょ」
「いや、だから、僕は植木職人でもあって詩人だから」
植木職人でもあって詩人……
ああ、やっぱり。
きっと面倒な話だ。
「姉ちゃん、僕はね、いつも都会の真ん中で、ここに思いを馳せながら詩を作ってたんよ。それにね、気がついたんだ」
玄太の唇が、鶏唐ときんぴらの油でテカテカ光っている。