玄太、故郷へ帰る



窓の外を見ると、雪はまだ降り続いている様だった。
日が落ちるのが早い。
外はもう、ほとんど真っ暗だ。


「……雪、やべえな」


玄太が、私の視線が外に向いているのに気が付いて、そう呟く。


「父さん、また明日は朝から雪かきするよ」


私がわざと、意地悪を含んでそう言ってやると、

「うん。僕、明日は雪かき手伝うし」

と、弟はやっぱりあっけらかんとした様子だ。


「何言われるか、わかんないよ」


と、脅してみる。


「もう父さんの小言には慣れてるよ。東京行く時に、随分言われたしね。僕、塩まで撒かれちゃってさ」


「ぶはっ、そうだったそうだった。あん時は父さんすごい剣幕で、あんたの事、追いかけてさあ」


「鬼みたいだったよね、真っ赤になってさ」


「そうそう」


いつの間にか弁当もそっちのけで、姉と弟の会話は弾む。

なんだ。
やっぱり。
大した事ではない様な気がしてくるから不思議だ。
結婚なんて子供ができたなんて、なんだ。
よく考えたら目出度い事ばかりじゃないか。



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