玄太、故郷へ帰る
5
次の日の朝、目が覚めると、
ザッザッザッ
カツッ……
ザッザッザッ
外では、昨日よりもずっと静かな雪かきの音が、響いている。
寝ぼけた頭で、よく耳を澄ませてみると、
ザッザッザッ
ザッザッザッ……
その音は、二つ重なっている様だ。
ああ、そうだ。
玄太が来ているんだった。
私はするりと布団から抜け出し、凍える様な寒さの中で手早く着替えだけを済ませた。
父と玄太が一緒に雪かきをしている。
いったい何年ぶりだろう。
揉め事は起きてないだろうか?
少し慌てて一階へ降りると、廊下にはすでに味噌汁のいい香りが漂っていた。
「おはよう、美香恵。ほら、さっさと先に食べちゃいなさい。仕事、遅れちゃうわよ」
キッチンには、そう言って私を急かす母と……
「おはよう、ございまあす」
お味噌汁とご飯を運ぶ、お腹の大きい弥生ちゃんの姿。
「弥生さんね、早起きなのよ。お家が植木屋さんなんですって。朝がね、早いらしいのよ」
そう言って味噌汁を注ぐ母の後ろ姿は、何だか機嫌がよさそうだ。