玄太、故郷へ帰る
「ごちそうさま」
私はさっさとご飯と卵焼きを味噌汁で流し込み、アジのひらきを半分残したまま立ち上がった。
「あら、もういいの? コーヒーは?」
「うん。いいや。今日は朝の読み聞かせがあるから、早く出ないと」
……というのは嘘だけれど。
私は母と弥生ちゃんを尻目に、そそくさと二階に上がり、出勤の準備をした。
今日は早めに出よう。
雪も積もっているみたいだし。
ザッザッザッ……
ザッザッザッ……
……カツ
ザッザッザッ……
二人の雪かきはまだ続いている。
案外、仲良くやっているのかもしれない。
父の怒鳴り声も聞こえないし。
かと言って他に会話も、聞こえないのだけれど。
玄太は玄太なりに、弥生ちゃんは弥生ちゃんなりに、父や母とうまくやっていくのかもしれないな。
と、私は鏡の前で、伸びた髪をまとめながら思った。
私の心配なんて、きっと無用なんだ。
なんだかそれも……寂しい様な気もするけれど。