玄太、故郷へ帰る

すると、負けじと玄太も意地悪そうな顔をして答える。


「好奇心だよ、好奇心。姉ちゃん、そうゆうとこわかんないから、ダメなんだよ」


「………」


……玄太の可愛らしい顔が台無しだ。

この、意地悪な笑顔も、頬っぺたのニキビも。

何より、この面倒な性格が弟をダメにしているに違いない。

私はフウ、と小さな溜め息を吐いた。


僕の人生に一番必要なものをここに埋めてるから、姉ちゃんに見せてやる、なんて。
時々取り出してこっそり見てるんだ、なんて。
仕方なく付き合ってやってるのに。
中学生の弟に、華の女子高生である私が。

なのにこんな、空っぽの箱を見せられて、笑点の大喜利みたいなオチ。

……煩わしくて、びっくりする。


「はいはい、わかったから。もう帰るよ。今日、お父さん早いんだって」


そう言って私が立ち上がると、不服そうな弟の声がグサリと下から突き刺さってくる。


「ちぇ。やっぱ、つまんねえよな、姉ちゃんって」


「………」


「現にさ、好奇心があっただろ？ この箱の中身に。僕はね、友達に見せてはこうして集めてるんだ。好奇心を」