玄太、故郷へ帰る
もう、心配なんかするもんですか。
そう言えば、玄太がいた頃の我が家はいつもこうだった。
ハラハラするのは私と母ばかり。
母はのんびりとした性格だから、すぐに忘れてしまうけれど、私だけが最後までオロオロして、無駄な労力を使っていたのだ。
ああ、変わらないな、と思ってしまう。
家族というものは、こうしていつまでも、各々の役割を忘れずにいるものなのかもしれない。
何年経っても、母が玄太の好きな魚肉ソーセージを覚えている様に、私はいつまでも、弟が心配で可愛くてたまらないのだ。
ちょっと、生意気だけれど。
キュルキュル……
車に乗り込んでエンジンをかけると、その音に気が付いた玄太が、こちらに手を振っているのがバックミラー越しに見える。
長い腕をゆらゆらと無駄に大きく動かして。
その姿に、私は思わず微笑んでしまう。
ああ。
やっぱり可愛い……私の弟。