玄太、故郷へ帰る



夕方、雪も止んで、私は仕事帰り、郵便局へ寄って漫画を発送してから、川沿いの道を走っていた。


気持ちが晴れ晴れとしていた。
もう、とっくに日は落ちてしまっているけれども。
気持ちが青々として、何だか鼻歌まで出そうな気分だ。


生まれて初めて、ここから旅立って行く、私の漫画。

旅立ったきりか。
何も得ずに戻って来るか。
それともまたどこかへ旅立つのか。


ああ、ワクワクする。

臆病者で保守的な私にしては、かなり思い切った方だと思う。
評価されたいなんて、本当はあんまり考えた事なんかなかったけれど。
たまにはこんな気持ちも、いいかもしれない。


そんな風に私が満足気に運転する車の、ヘッドライトが照らす先を、二つの人影が横切った。

見覚えのあるシルエット。
背が高いのと。
……お腹が大きいの。


「玄太?……弥生ちゃん?」


私は慌てて、ブレーキを踏む。

のんびりした仕草でこちらを振り向くのは、やっぱり弟の玄太だ。
私は路肩ギリギリに車を寄せ、止める。


「玄太。なにやってるの?」


「あ、姉ちゃん、お帰り」



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