玄太、故郷へ帰る
魚肉ソーセージと引き換えにもらった、コンビニでコピーし、ホッチキスで留めただけの玄太の詩集。
その詩集は、大事に机の二番目の引き出しの奥にしまってある。
私の漫画と、玄太の詩集。
各々の夢は各々のモノクロの形となって、こうして引き出しに収まっているけれど。
いつかはここを飛び出して、世界に羽ばたいて行くのかもしれない。
……私はそれを、密かにだけれど、強く願っている。
ああ、そうだ。
あの日、玄太と約束をしたんだ。
いつか夢を叶えようだなんて。
どっちが先に自分の作品を出版できるか勝負だなんて。
それまで頑張るんだ、なんて。
……そんな青臭い約束をしたんだっけ。
東京の空の下で。
私は引き出しを閉め、もう一度コーヒーに口を付ける。
玄太の顔が浮かんで、ほんの少しにんまりとしてしまう。
二階にある私の部屋の窓からは、相変わらず大粒の雪が、フワリフワリと降りてくるのが見える。
その景色は、見ているだけで肌を冷やす様な気がして、私は肩に羽織っていただけのカーディガンに、慌てて袖を通した。