ラッパート!
「渡辺君、いるんでしょ?」
そんな時、田中さんはそういって僕が隠れてた方を見る。
さすがですね、なんて心の中で呟く。
「やっぱりわかってたみたいだね。
どうしてこんなところで練習を?」
開き直って聞いてみた。
「私、コンクールに出たいの」
田中さんは、そういった。
そして、自嘲気味に話を続ける。
「私は、貴方や明みたいに上手じゃない。
けど、他の一年生とは一緒になりたくない。
コンクールに出れないって諦めて練習をやめるような自分になりたくない。
最後まで足掻き続けたいから・・・・。」
僕はどうやらトランペッターが好きらしい。
諦めの悪いトランペット吹きが僕の目には止まるのだ。
それに今まで、陰口や悪口に身を隠し、自分を守りたがる人たちばかりに会ってきた。
そんな人なんかお構いなしに、上を目指し、遥かな高みへと手をのばそうと足掻いている人がこうしている。