碧い月夜の夢
プロローグ
【プロローグ】
昼下がり。
春から夏に変わるこの季節、海の目の前にあるこの喫茶店は、その景色に溶け込むような青い屋根と白い壁が印象的なお店で、入り口の横に備え付けてあるウッドデッキも、いい雰囲気を醸し出していた。
「ここかぁ…」
暑さにくらつく頭を少し押さえ、そんな外観を眺めながら、凛々子はバッグを肩にかけ直して呟く。
今日はガソリンスタンドのアルバイトは休みで、たまにはランチでも一緒に食べようと親友のサヤカに誘われてこの喫茶店に来てみたが、なかなか素敵な店だ。
ドアを開けると、カランコロンとドアの上に取り付けてあるカウベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
その音に気付いた背が高い眼鏡の店員が、にこやかに挨拶をする。
続いて、カウンターの中でトントン、とリズムよく包丁を動かしている髪の長い女性と、その横で洗い物をしている茶髪の男性の店員の挨拶も聞こえてきた。
近づいてきた眼鏡の店員に、待ち合わせです、と告げる。
すると、こっちに気付いたサヤカがぶんぶんと手を振っているのが見えた。
海が見渡せる窓際のボックス席。
凛々子が座ると、店員はすぐに水の入ったグラスを持ってきた。
「どうぞ。メニューが決まったら、呼んでくださいね」
お冷やとメニューを置いて立ち去る店員の後ろ姿を見て、サヤカは両手を胸の前に組んで目をキラキラさせている。
凛々子は今になって、サヤカが何故あれだけ強引に自分をランチに誘ったのか、何となく理解出来た気がした。
「いやぁん、いつ見てもカッコいいわぁ♪」
「……ちょっと。久しぶりに会ったのにシカトですか」
挨拶も無しか、と、凛々子はサヤカを軽く睨んで。
当のサヤカは、さっきから目の前のコーヒーそっちのけで、この喫茶店のウエイターの男二人に視線がくぎ付けになっている。
久しぶりで、しかも誘ったのはサヤカの方なのに、この女はそんなことにはお構い無しか。
ランチタイムは過ぎていて、店にはお客さんは数えるほどしかいなかった。
サヤカに言わせると、この喫茶店はかなり人気があり、お昼時には女性客で店内がいっぱいで、ゆっくり出来ないのだそうだ。
――ゆっくりイケメン店員を眺められない、と言い直して欲しい。
昼下がり。
春から夏に変わるこの季節、海の目の前にあるこの喫茶店は、その景色に溶け込むような青い屋根と白い壁が印象的なお店で、入り口の横に備え付けてあるウッドデッキも、いい雰囲気を醸し出していた。
「ここかぁ…」
暑さにくらつく頭を少し押さえ、そんな外観を眺めながら、凛々子はバッグを肩にかけ直して呟く。
今日はガソリンスタンドのアルバイトは休みで、たまにはランチでも一緒に食べようと親友のサヤカに誘われてこの喫茶店に来てみたが、なかなか素敵な店だ。
ドアを開けると、カランコロンとドアの上に取り付けてあるカウベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
その音に気付いた背が高い眼鏡の店員が、にこやかに挨拶をする。
続いて、カウンターの中でトントン、とリズムよく包丁を動かしている髪の長い女性と、その横で洗い物をしている茶髪の男性の店員の挨拶も聞こえてきた。
近づいてきた眼鏡の店員に、待ち合わせです、と告げる。
すると、こっちに気付いたサヤカがぶんぶんと手を振っているのが見えた。
海が見渡せる窓際のボックス席。
凛々子が座ると、店員はすぐに水の入ったグラスを持ってきた。
「どうぞ。メニューが決まったら、呼んでくださいね」
お冷やとメニューを置いて立ち去る店員の後ろ姿を見て、サヤカは両手を胸の前に組んで目をキラキラさせている。
凛々子は今になって、サヤカが何故あれだけ強引に自分をランチに誘ったのか、何となく理解出来た気がした。
「いやぁん、いつ見てもカッコいいわぁ♪」
「……ちょっと。久しぶりに会ったのにシカトですか」
挨拶も無しか、と、凛々子はサヤカを軽く睨んで。
当のサヤカは、さっきから目の前のコーヒーそっちのけで、この喫茶店のウエイターの男二人に視線がくぎ付けになっている。
久しぶりで、しかも誘ったのはサヤカの方なのに、この女はそんなことにはお構い無しか。
ランチタイムは過ぎていて、店にはお客さんは数えるほどしかいなかった。
サヤカに言わせると、この喫茶店はかなり人気があり、お昼時には女性客で店内がいっぱいで、ゆっくり出来ないのだそうだ。
――ゆっくりイケメン店員を眺められない、と言い直して欲しい。