碧い月夜の夢
「アルマは永久に無くならない。あれの目的は“破壊”だ」



 凛々子は、何も言い返せなかった。

 想像力がない訳ではないと信じたかったが、レオンが言うこの世界の事を、全く理解する事が出来ない。

 レオンは一体、どんな世界で生きてきたんだろう?

 そんなことを考えていると、レオンは打って変わって笑顔を作る。



「だァから、そんな深刻な顔すんなって。こっちはそれが当たり前なんだからさ。どっちかって言うとオマエの方が大変だぜ?」

「何でよ」

「テルラと繋がっちまったばっかりに、あんなものに狙われてるんだからな」



 あれはやっぱり、自分をを狙っていたのか。

 繋がったばっかりにって…こちとら、繋がりたくて繋がった訳ではない。

 凛々子は、がっくりと項垂れた。

 少しずつ、少しずつではあるが、この最悪な夢の原因が見えてきた。

 どう言う訳か、凛々子は夢でレオンの住んでいる世界、テルラと繋がってしまった。

 そして、そのせいでアルマというあの黒い影の兵士集団に狙われている。



「……あの、さ」

「何だよ?」

「もしあたしがあのアルマに捕まったら…どうなっちゃうのかな?」



 アルマの目的は、破壊と言っていた。

 まさか夢の中で、自分が破壊されたりは…。

 そんな凛々子の心配をよそに、レオンは真剣な顔で腕組みをする。



「アルマに捕まったら、未来永劫、闇に閉ざされる」

「………と、言うと?」

「オマエにとってのこの夢の世界から、ずっと抜け出せなくなるってことさ」



 絶対に、ぜぇぇったいに、嫌だ。

 アルマに追いかけられた時のあの恐怖は、きっと人間の本能なのだ。

 あれを認識した時の恐怖。

 レオンに会う前、今みたいな説明を受けてない時でさえ、凛々子は本能的にあれから逃げていた。

 あ、でも、と凛々子は思い直す。



「でもさ、あたしにとってこれは夢なんだから、目を覚ましたら大丈夫なんじゃないの?」

「……そんなにうまい話があるかよ。じゃあ、俺とオマエが会ってから、どのくらいの時間が経った?」



 そんなことを聞かれて、凛々子は考える。

 夜空に浮かぶ碧い月は、この夢が始まってからずっと、同じ位置に止まっている。

 凛々子は、はっとした。
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