碧い月夜の夢
「姿はオマエの知り合いかも知れねェが、あれもアルマだ。気を付けろ」
黒い影だとばかり思っていたアルマに、そんなバージョンもあるのか、と凛々子は思う。
「さっきの事でオマエの弱味があちらさんにバレたって事だよ。アルマの狙いは、このテルラから凛々子を消すことなんだからな」
「……大丈夫…よ」
そう言ってはみたものの、精神的にはかなり参っている。
だが、凛々子にはこの中学のクラスメイト達がどんな攻撃をしてくるのかが、容易に想像出来た。
『おい、見ろよ。人殺しだぜ』
一人が凛々子を指差して言った。
それにつられて、クラスメイト達は一斉に凛々子を指差して。
『ナイフで刺したんだって』
『怖いよねぇ』
『なァ、人を殺すってどんな気分なんだ?』
『やめろよ、お前も殺されるぜ』
『怖い怖い、アイツは人殺しだからな!!』
『人殺し!!』
『人殺し!!』
クラスメイト達は、指をさしながら口々に凛々子に向かって言葉を投げ掛ける。
唇を噛み締めて、凛々子はじっと耐えた。
凛々子が中学3年生の2学期から、学校に行かなくなった理由。
正当防衛と言うことで罪には問われなかったが、このニュースは当時全国で放送されるような大事件で、テレビや新聞では連日、この事件について論議が交わされていた。
過剰防衛なのではないか。
いくら正当防衛とは言え、中学生の女の子が一人の人間を殺傷するなんて、普通とは思えない。
言いたい放題のマスコミの情報だけが、世間の人達にとっての事実だった。
ある日、この事件の被害者である小学生の女の子の母親が、凛々子の家にお礼を言いに来た。
母親は玄関先で、菓子折りを手渡して。
まだ左腕を三角布で吊っていた凛々子も、玄関に出て行くと。
引きつった笑顔を浮かべ、ウチの娘を助けて頂いてありがとうございます、と、うわべだけのお礼を言う、女の子の母親。
その母親の横でこっちを見ている女の子と、凛々子は視線が合った。
女の子は、にっこりと笑って。
「お姉ちゃん!」
と、こっちに駆け寄って来ようとした。
だが母親が、慌てて女の子の手を掴む。
勝手に人の家に上がったらダメよ、と女の子をたしなめる母親。
凛々子には、こう聞こえた。
“人殺しに関わっちゃダメよ”
黒い影だとばかり思っていたアルマに、そんなバージョンもあるのか、と凛々子は思う。
「さっきの事でオマエの弱味があちらさんにバレたって事だよ。アルマの狙いは、このテルラから凛々子を消すことなんだからな」
「……大丈夫…よ」
そう言ってはみたものの、精神的にはかなり参っている。
だが、凛々子にはこの中学のクラスメイト達がどんな攻撃をしてくるのかが、容易に想像出来た。
『おい、見ろよ。人殺しだぜ』
一人が凛々子を指差して言った。
それにつられて、クラスメイト達は一斉に凛々子を指差して。
『ナイフで刺したんだって』
『怖いよねぇ』
『なァ、人を殺すってどんな気分なんだ?』
『やめろよ、お前も殺されるぜ』
『怖い怖い、アイツは人殺しだからな!!』
『人殺し!!』
『人殺し!!』
クラスメイト達は、指をさしながら口々に凛々子に向かって言葉を投げ掛ける。
唇を噛み締めて、凛々子はじっと耐えた。
凛々子が中学3年生の2学期から、学校に行かなくなった理由。
正当防衛と言うことで罪には問われなかったが、このニュースは当時全国で放送されるような大事件で、テレビや新聞では連日、この事件について論議が交わされていた。
過剰防衛なのではないか。
いくら正当防衛とは言え、中学生の女の子が一人の人間を殺傷するなんて、普通とは思えない。
言いたい放題のマスコミの情報だけが、世間の人達にとっての事実だった。
ある日、この事件の被害者である小学生の女の子の母親が、凛々子の家にお礼を言いに来た。
母親は玄関先で、菓子折りを手渡して。
まだ左腕を三角布で吊っていた凛々子も、玄関に出て行くと。
引きつった笑顔を浮かべ、ウチの娘を助けて頂いてありがとうございます、と、うわべだけのお礼を言う、女の子の母親。
その母親の横でこっちを見ている女の子と、凛々子は視線が合った。
女の子は、にっこりと笑って。
「お姉ちゃん!」
と、こっちに駆け寄って来ようとした。
だが母親が、慌てて女の子の手を掴む。
勝手に人の家に上がったらダメよ、と女の子をたしなめる母親。
凛々子には、こう聞こえた。
“人殺しに関わっちゃダメよ”