碧い月夜の夢
☆  ☆  ☆



 サヤカと別れてアパートに戻り、窓を開けて夕暮れの海を眺める。

 流れる潮風とオレンジ色に輝く海面はキラキラと光っていて、とても綺麗だった。

 帰り際、こうなったら絶対にこの喫茶店の常連になってやる、と意気込んでいたサヤカを思い出して、クスッと笑う。

 そう言えば、あの眼鏡の店員の言葉。



『早く起きてあげて』



 そんな事を言っていた。

 当然、あの時は起きていたのだから、言葉通りの意味合いではないだろう。

 どうしてなのか、無性にレオンに会いたくなった。

 もう何ヶ月も会ってないような気がする。

 常にこっちを見下ろすようにして立っているレオン。

 口が悪くて、いつも人をバカにして。

 ……でも何故か、無性に会いたい。



「今夜眠ったら、会えるかな」



 海を眺めながら、そんな事を思い。

 ふと、気付く。

 眠らないと行けない夢の世界。

 だが、レオンにとっては凛々子の夢の世界が現実で。

 あっちの世界から戻ってくる時はいつも、強烈な眠気に襲われていた。

 凛々子は、テルラからこっちに戻ってくる時には、言わば睡眠状態だ。

 そこまで考えて、はっとする。



「……まさか…寝てたの、あたし」



 眼鏡の店員が言っていた『早く起きてあげて』という言葉。

 そっか、と、凛々子は妙に納得した。

 今夜はきっと、レオンに会える。

 凛々子はそう確信して、窓を閉めた。





☆  ☆  ☆





 凛々子が目を覚ますと、そこは海岸だった。

 レオンと最初に会った、あの喫茶店の近くの海岸。

 砂浜に仰向けで寝転がっていて、空には、あの時のように綺麗な満月が碧みがかった光を放っていた。

 凛々子はそのまま、首だけを左に向ける。

 灯台もちゃんと、崖の上から規則正しい光を海に照らしていて。




「オマエ、寝過ぎ」



 いきなり聞こえた声に、凛々子は、がばっと起き上がる。
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