碧い月夜の夢
【4】
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「レオン……!!」



 自分の叫び声で目が覚めた。

 その手は、いつもの見慣れたアパートの天井に向かって伸びていた。

 しばらく放心する凛々子。

 夢だけど、あれは夢じゃない。

 あんな状況の中で、レオンは今もたった1人でテルラに残って戦っている。

 それなのに、レオンを残して自分だけ目が覚めるなんて。

 どうにかまた眠ろうと思い、掛け布団を頭から被った。

 だが、すぐに目覚まし時計が鳴り響く。



「何よ、もう!!」



 凛々子は乱暴に目覚まし時計のスイッチを切った。

 時間は、朝の7時。

 ガソリンスタンドのアルバイトは早番で、その時間帯は出勤している人数が少なく、遅刻する訳には行かない。

 凛々子が欠けると、皆に迷惑がかかる。

 仕方ない、と、凛々子は重い身体を引きずるようにして、起き上がった。




☆  ☆  ☆




 仕事中もずっと、レオンの事が気になって仕方がなかった。

 あの状況で…。

 神様、どうかどうか、レオンを無事でいさせて。

 もう何回、祈ったか分からない。



「安堂、お客さんだぞー。って、何やってんだお前?」



 夕方になり、無意識に胸の前で手を合わせていたら、マネージャーが不思議な顔をしてこっちを見ていた。

 何でもないです、と答えて、凛々子は慌てて帰り支度をしようとしたが、思い止まる。

 確かマネージャー、お客さんって言ってなかっただろうか?

 そう思って洗車場の方を覗き込むと、そこには桜井浩二が立っていた。

 そして凛々子に気がつくと、少しだけ笑顔を浮かべ、こっちに向かって軽く会釈をした。

 凛々子は慌てて、浩二に駆け寄る。



「桜井くん…どうしたの?」

「ごめん、仕事場まで押し掛けて…でも」

「サヤカがあたしの仕事場、教えたんだよね?」

「……ごめん」

「あ、桜井くんは悪くないよ。教えたのはサヤカなんだから」



 ひたすら恐縮している浩二に、凛々子は苦笑する。

 本当は、一刻も早く帰って眠りたい。

 眠って、テルラに行って、レオンに会いたい。

 でも、この前サヤカは、浩二の話を聞いてあげて、と凛々子に言った。

 “お願い”と。

 こっちだって、サヤカとは長い付き合いなのだ。

 お願いと言ったサヤカの顔を見れば、どれだけ真剣なのか、凛々子には分かる。
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