碧い月夜の夢
その叫びを聞いて、気丈に振る舞ってはいるが、凛々子の足は無意識にガクガクと震えている。
だが、レオンが凛々子を背中に庇った。
「そんなもん、俺には関係ねェよ!!」
そう言って、レオンは腰に巻き付けた皮ベルトから、ナイフを取り出す。
「レオン!?」
「今までもさ、武器で戦おうと思ってたんだけどな。オマエのトラウマがナイフだったから、今まで使わなかった」
それを聞いて、凛々子の身体の震えが止まった。
そんな所にまで、気を使ってくれていたんだ。
全く、この人は何処まで優しいんだろう。
「もう大丈夫だな?」
「当たり前よ」
振り返ってそう聞くレオンに、凛々子は力強く頷いた。
それを見て、レオンは中年の男の集団に向かって、一気にナイフを振り上げた。
目の前にいた何人かのアルマが、一瞬で消え失せる。
それを合図に、アルマは一斉にこっちに向かって襲い掛かってきた。
レオンは凛々子を庇いながら、次々にアルマを倒して行く。
だが、この集団と一人で戦うには、多勢に無勢。
ただでさえ、レオンは傷付いている。
どうしたらいい?
アルマの集団を避けながら、凛々子は考えを巡らせた。
ここは、アルマが造り出した幻影。
所詮、ニセモノだ。
凛々子は頭の中でイメージを思い描く。
凛々子の現実世界の、一番好きな風景を。
レオンと最初に出会った、あの浜辺を。
目を閉じて、心を開放する。
――…そしてまた、世界が反転した。
☆ ☆ ☆
気が付けば、レオンと最初に出会った砂浜だった。
見渡せば、ずっと続く綺麗な砂浜と、夜の海。
空にはいつものように、碧みがかった満月が浮かんでいる。
「何てヤツだよ」
皮ベルトににナイフをしまって、レオンはため息混じりに呟いた。
呆れたのではなく、感嘆しているのだ。
「どんだけパワーアップしてんだ、オマエ」
「だって、あのままじゃレオンが…」
「……全く…俺の事なんか気にしなくても…」
レオンは言いながら凛々子を優しい眼差しで見つめ、ぽんぽん、と頭を撫でてくれて。
「俺はオマエが…心配なんだよ」
潮風に髪をなびかせながら、レオンは小さく言った。
波は穏やか、辺りは今のところ、静かで落ち着いている。
月明かりが海面を照らし、それだけでお互いの表情まで見ることが出来た。
だが、レオンが凛々子を背中に庇った。
「そんなもん、俺には関係ねェよ!!」
そう言って、レオンは腰に巻き付けた皮ベルトから、ナイフを取り出す。
「レオン!?」
「今までもさ、武器で戦おうと思ってたんだけどな。オマエのトラウマがナイフだったから、今まで使わなかった」
それを聞いて、凛々子の身体の震えが止まった。
そんな所にまで、気を使ってくれていたんだ。
全く、この人は何処まで優しいんだろう。
「もう大丈夫だな?」
「当たり前よ」
振り返ってそう聞くレオンに、凛々子は力強く頷いた。
それを見て、レオンは中年の男の集団に向かって、一気にナイフを振り上げた。
目の前にいた何人かのアルマが、一瞬で消え失せる。
それを合図に、アルマは一斉にこっちに向かって襲い掛かってきた。
レオンは凛々子を庇いながら、次々にアルマを倒して行く。
だが、この集団と一人で戦うには、多勢に無勢。
ただでさえ、レオンは傷付いている。
どうしたらいい?
アルマの集団を避けながら、凛々子は考えを巡らせた。
ここは、アルマが造り出した幻影。
所詮、ニセモノだ。
凛々子は頭の中でイメージを思い描く。
凛々子の現実世界の、一番好きな風景を。
レオンと最初に出会った、あの浜辺を。
目を閉じて、心を開放する。
――…そしてまた、世界が反転した。
☆ ☆ ☆
気が付けば、レオンと最初に出会った砂浜だった。
見渡せば、ずっと続く綺麗な砂浜と、夜の海。
空にはいつものように、碧みがかった満月が浮かんでいる。
「何てヤツだよ」
皮ベルトににナイフをしまって、レオンはため息混じりに呟いた。
呆れたのではなく、感嘆しているのだ。
「どんだけパワーアップしてんだ、オマエ」
「だって、あのままじゃレオンが…」
「……全く…俺の事なんか気にしなくても…」
レオンは言いながら凛々子を優しい眼差しで見つめ、ぽんぽん、と頭を撫でてくれて。
「俺はオマエが…心配なんだよ」
潮風に髪をなびかせながら、レオンは小さく言った。
波は穏やか、辺りは今のところ、静かで落ち着いている。
月明かりが海面を照らし、それだけでお互いの表情まで見ることが出来た。